ミーツ英語

9月からイギリス留学予定!元予備校講師・現大学院生が送る英語学習法・英文法解説・参考書紹介

学参レビュー③西きょうじ『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー)

今回とりあげるのは、西きょうじ『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー、以下『ポレポレ』)です。

ポレポレ英文読解プロセス50 [ 西きょうじ ]

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まずはレビューから!

 

オススメ度:☆☆☆☆

難易度:中~上級者向け

 

この参考書はいわゆる「英文解釈」系の参考書になります。書名には「英文読解」とありますが、まあ同じことです。このブログで英文解釈系の参考書を扱うのは初めてなので、まずは簡単に、英文解釈とは何かについて説明しておきましょう。

 

・「英文解釈」とは?

日本(の受験業界)ではしばしば比較的短い英文を文の要素(SVOC)に腑分けしたりして構造を分析する作業を「英文解釈」などと呼ぶことがあります。長文に取り組む前の準備段階として、一文一文を正確に解釈できるようになろうという趣旨でやるものです。

 

そのうえでは、英文法で勉強した知識を実際に英文に読む際にどう活用すればよいかを学びます。もちろん、英文法の知識で不要なものなどないのですが(というか、英文法はすべての技能のベースなので、英文法が独立した分野としてあるような書き方は避けたいのですが、たとえば予備校では「英文法」という名前の授業が実際にあり、英文法の四択問題などを解くことに特化した授業がなされることがあります)、特に読解で重要になってくる文法事項があるんですね。

 

たとえば、英文解釈では時制が焦点になることはあまりないでしょう。焦点になるのは、文型、準動詞、関係詞、接続詞……etc. あまり英文法の勉強ではフォーカスされない知識が、英文解釈では前面に出てくることがあります。たとえば、文法の授業ではおそらくさらっと扱われる事項として、前置詞のついた名詞は基本的に文の要素にならないというものがあります。これは英文を読むうえではあらためてよく意識する必要がある知識です。その他、英文解釈では、「特殊構文」と呼ばれる倒置や省略なども扱われることが多いです。以上が、英文解釈と呼ばれるものの内容ですね。

 

いつからそう呼ばれるようになったかは知りませんが、たとえば私が以前教えていた予備校は河合塾の提携校で、河合塾のカリキュラムとテキストを用いていたのですが、1学期(河合塾では基礎シリーズと呼びます)は「英文解釈」という授業が必修で、2学期(完成シリーズ)からは「英文読解」という名前に変わって同じような授業をしていました。(もっとも、1学期から長文の授業も並行してやっていましたが。実際には1年で生徒を受験を戦えるようにしなければならないので、1学期のあいだずっと解釈だけやってるわけにはいかないんですね。)

 

「英文解釈」系の参考書は、「長文読解」系の参考書とは違い、まずは一文一文を正確に読めるようになることを目的としていますので、扱われる英文は短いものが多いです。和訳が出る大学を受ける受験生はもちろん、そうでない受験生も、英文法で覚えた知識を、実際に英文を読むなかでどう活用すればよいのかを学ぶには、必要なプロセスだと思います。

 

有名どころの「英文解釈」系参考書としては、篠田重晃他『英文読解の透視図』(研究社)、伊藤和夫『ビジュアル英文読解』(駿台文庫)、同『英文解釈教室』(研究社)などがありますね。(以下に、リンクを貼っておきます。興味のある方はのぞいてみてください!)

英文読解の透視図 [ 篠田重晃 ]

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 ・『ポレポレ』の衝撃

『ポレポレ』は私が生まれた初めてやった英文解釈の参考書です!

 

この参考書は、代ゼミマニアの友だちが教えてくれて知りました。やったのは高3の最後のほうではないかと思います。私は塾や予備校に通っておりませんでしたので、それまで英文解釈的なものを一切知りませんでした。学校では、長文の解説でひとつの文を取り出して丁寧に解釈することはあったかもしれませんが、英文解釈だけをやるような授業はやっていなかったと思います。なにより田舎でしたし、当時の私にはまともなネット環境がなかったので、情報も入ってこなかったんですね。

 

はじめてやったときは、衝撃的でした!!それは、英文解釈という勉強をそれまでしたことがなかったのもありますが、今思うと、この参考書が、英文解釈の参考書のなかでは群を抜いてよくできていたからだったのだと思います。この参考書で英文解釈を始められた私はラッキーでした。Kくん、ありがとう!

 

その書名、なぞの表紙(カバーをとるとまたびっくりします)、ときどき挟まれる著者の動物イラスト、そして(今は変わっているようですが)著者のとがった自己紹介にプロフィール写真のクセのすごさといったら!!これらに面食らう人は多いのではないでしょうか。まさに出版元の予備校のカラーでもありますが、イロモノ感満載ですが、内容はいたって硬派です。

 

この参考書の一番の特徴は、書名にもあるとおり、英文読解をする際の「プロセス」、つまり、英文を読むときに頭のなかでどんな思考回路を経るのかが、文字化されているところです!それまで私がやってきた長文の参考書はもちろん、そのあとやった英文解釈の参考書も、基本的には、「この英文はこうなっている」という結論は解説してくれるんですが、この参考書は、「その英文がなぜそうなっていると解釈できるのか」ということを、英文を左から右に読み進めながら、ときに生徒の目線に立ってわざと誤読してみせたりしながら、示してくれているのです!

 

たとえば、一番目の問題からして衝撃でした。Frank talksから始めるその英文を、まずはFrank talksまで見た時点ではFrankが固有名詞で主語であり、talksが動詞talkの現在形であると解釈するとしたあとで、そのあとにrevealという動詞が出てくるのを待って、talksが名詞talkの複数形でrevealの主語になり、Frankは「率直な」という意味の形容詞でtalksにかかっていると解釈をあらためるというプロセスを、紙面で実演してくれるうのです!

 

今になってみると、実はそういう参考書の元祖はこの参考書ではなく、上述の『英文解釈教室』なのですが、『ポレポレ』はプロセスをもっと前面に出していると思います。ちなみに言うと、英文を読む際に、頭のなかでは何が起こっているかをさらに徹底的に文字化しているもので、『ポレポレ』よりもハイレベルなものに、最近出た北村一真『英文解体新書』(研究社)があります。この本のレビューもいずれ書いてみたいと思っています。

英文解体新書 構造と論理を読み解く英文解釈 [ 北村一真 ]

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感想(0件)

 

さて、『ポレポレ』では、プロセスを紙面でたどりながら英語を読むときの頭の動きを追体験し、さらに、そのなかで前置詞のついた名詞は主語にならないとかといった、英文を読むのに必須のルールを学んでいくのです。その配列も見事で、また問題数も極限まで絞られていて、そのために一つの問題にいくつものポイントが含まれています。密度がすごいんです。一粒で何度ももおいしい良問が揃っています。最短ルートで英文解釈のかなりハイレベルなところまで到達できるはずです。そして、非常に薄い参考書なので、参考書を最後までやり通すのが苦手な人でもきっとやり遂げられます。

 

ただ、『ポレポレ』には、SVの把握といった割と基本的なところから始める一方で、文型や準動詞などについての基本的な解説はほとんどなく、倒置や省略、名詞構文などの特殊構文が中心になっています。つまり、網羅性が低いんですね。同じことは、『英文読解の透視図』や『英文解釈教室』などにも言えます。それだと、たとえば分詞構文などの、英文を読むうえでは苦手な人の多く、にもかかわらず英文を読んでたら必ず出あうような事項が身につかないと思います。なので、これらの参考書を読む前には、まず『ポレポレ』の著者の『英文読解入門基本はここだ!』(代々木ライブラリー)を強く勧めます。河合塾でも、1学期(基礎シリーズ)のうちは、まずは文型とか準動詞をみっちりやるんです。特殊構文は2学期(完成シリーズ)からなんですよ。

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感想(23件)

 今回の記事ははからずも、英文解釈入門の入門になってしまいました。英文解釈とは何か、何をやればいいのかといったことが気になっているみなさんの役に立つことを願います!