「with+抽象名詞」の存在意義
みなさんこんにちは!
今日は試験的に英文法の解説記事を書いてみたいと思います。今回とりあげるのは、「with+抽象名詞」です。これは副詞とイコールになると習うことがあります。たとえば、「この文を日本語に訳すのに苦労した」と言いたいとき、形容詞のdifficultを使って、
It was difficult for me to translate this sentence into Japanese.
≒This sentence was difficult for me to translate into Japanese.
(直訳は「この文を日本語に訳すのは難しかった」)
と言ったり、あるいは名詞のdifficultyを使って、
I had difficulty (in) translating this sentence into Japanese.
(直訳は「この文を日本語に訳すのに困難を伴った」)
と言うことができます。それでは、difficultの副詞形はないのか。ないんです!difficultに-lyをくっつけた形は存在しません。しかし、名詞のdifficultyの前に前置詞のwithを置いてwith difficultyとすると、「苦労して」のような、副詞に相当するような意味を表すことができるのです。便利だと思いませんか?
I translated this sentence into Japanese with difficulty.
これを、「難しさをもって」とか「困難とともに」などと和訳しないように気をつけましょう。
このように、一般に「with+抽象名詞」は副詞の働きをします。以上の説明からもお分かりのように、こうした形がある理由の一つは、形容詞のなかにはdefficultのように、派生副詞の存在しないものがあるということです。そこで、with difficultyという形で副詞の代用をするのです。もちろん、例外もあり、たとえば、difficultの反意語のeasyには派生副詞があります。easilyですね。ですが、これをwith easeと言うこともできます。たとえば、
He solved the problem with ease (=easily).
(「彼はその問題を簡単に解いた」)
そこで、もう一つ、この「with+抽象名詞」という形が存在する理由として、この形を使えば、抽象名詞に色々な形容詞をつけることができ、たとえばeaseがどんな「容易さ」なのかを多彩に表現できるのです。したがって上の例文は、以下のようにアレンジすることが可能です。
He solved the problem with great ease.
greatの位置には他にも、considerableとか、easeと結びつきのよいいくつかの形容詞を入れることができます。
以上、まとめますと、「with+抽象名詞」は副詞の働きをする。この形の存在意義は、①派生副詞をもたない形容詞を副詞的に用いたいときに重宝し、また、②抽象名詞の前に多様な形容詞をつけて様態に具体性をもたせることができると言えます。
ほとんど同じことが、「of+抽象名詞」という形にも言えます。これは形容詞の働きをしますが、存在意義は同じ。これについてはまた稿を改めましょう。
ちなみに、今回の記事を書くにあたって参考にしたのは、山崎貞『新々英文解釈研究』 (研究社、2008)、197頁です。
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