英国ビザ取得に至るまでの道②準備編
留学準備に追われているあいだに前回の投稿から少し時間が空いてしまいました。
今回は、実際にオンライン上+申請センターでビザ申請を行う前の準備としてどのようなことを行ったかをご紹介します!
今回の記事では特に、資金証明書類について、他のページにはないようなとっても大切な情報が書かれています。そこだけでも読んでほしいです!
・ビザの種類
まずですが、私の身分と申請したビザの種類を説明しておきます。
私は今現在30代前半で、日本で大学院の博士課程に通っています。10月からイギリスの大学の大学院にPhDを取得するために留学予定です。留学期間は正規の課程で博士論文を書き上げられれば3年ですが、延長して4年で書き終える人も多いようです。
ですので、私が申請した英国ビザは、Tier 4と呼ばれる学生ビザになります。もうここらへんから意味がよくわからない用語が出てきて不安になりますよね、でも大丈夫です。私は最後まで学生ビザがなぜTier 4と呼ばれるか知りませんでしたし、今も知りません。ほかのビザを何と呼ぶかさえ知りません。そんなものです。後で書きますが、私の場合は合格した大学からTier 4のビザを取得するようにとの指示がありました。
なお、同じTier 4でも大学と大学院の違いや留学期間の違い等があるかもしれません。今後の記事はすべて大学院博士課程に留学する人向けということにご留意ください。
・いつから申請できる?
私が申請した2019年時点では、留学開始の3ヶ月前からしか申請できませんでした。
ということは、私の場合、留学が始まる10月の3ヶ月前、つまり7月から申請できたはずなんですが、後で説明する資金証明の準備の関係で、結局申請できたのは8月前半でした。
ここで先取りしていってしまいますと、ビザが取得できて処理をされたパスポートが返ってきたのは8月中旬のことでした。
・書類の準備
さて、留学が決まりました、3ヶ月前になりました、ですぐビザが申請できるわけではありません。けっこう準備に時間がかかります。申請がギリギリになって焦りたくなければ、前もって準備を進めておきましょう。
①CAS番号
まず一番最初にやることは、大学にCAS番号というものを発行してもらうことです。
これはConfirmation of Acceptance for Studiesの略で、この番号に申請者の情報がひもづけられていて、イギリス政府はこの番号をとおして、申請者が大学からオファーをもらっているかどうかとか、IELTSの点数を満たしているかどうかなどを確認できるようです。
ちなみにですが、すでに大学にアプライする時点でIETLSのスコアシートを提出していて、それで合格していれば、ビザ申請に必要な語学テストの点数をすでに満たしていることは、CAS番号をつうじて確認されるのですね。したがって、IELTSのスコアシートを必要書類としているブログやサイトはけっこうありますが、CAS番号で確認できる場合は不要になるはずです。もちろん、不安なら持っていけばいいと思います(私も持っていきました(笑)。結局提出不要でしたが……。)
さて、このCAS番号は大学によって発行の仕方が異なるかもしれません。ほかの大学のことは知りませんが、私の留学先大学では、(ビザではなく大学のコースの)アプライ時にポータル上でアカウントを作成する必要があり、合格した後もそのポータルでいろいろな手続きが行われます。Tier 4ビザ申請にあたってそのポータルでCAS番号の発行を申請するようにとのメールが送られてきました。そこで、ポータル上で手続きをしてCAS番号の発行を申請しました。私の大学の場合は申請して2、3日でCAS番号が発行されました。
これは、私の大学の場合、PDFなどのファイルではなく、ポータル上のページに番号が記載されているだけでした。ここから重要なので、ぜひ覚えておいていただきたいのですが(申請についての記事でまた書きますが)、その場合、CAS番号が記載されたページは当日プリントアウトしてもっていくことをオススメします。
私はビザ申請をするにあたって、いくつかのブログやサイトをっ参考にしましたが、それらの多くで、CAS番号は書類形式でなく、番号だけ控えておけばよい、CAS番号が記載された書類は不要と書かれていました。これは、英国のいくつかの大学のホームページでビザ申請にかんするアドバイスのところにもそう書かれているのを見かけました。
しかし!、私は新橋のビザ申請センターで当日、CAS番号の記載された書類の提出を求められました(ただ、求め方としては、留学先大学がわかる書類を提出してください、と言われました。そこでCAS番号が記載された書類を出して受理され、それでビザが取得できました。もしかしたら入学許可書などでもよかったのいかもしれませんが、念のため、CAS番号が記載された書類を持っていくことをオススメします!)
すこし脱線しますが、このように、ビザ申請について書かれたページは、内容にけっこう違いがあります。そして、どれが正しいかもよくわかりません。私のブログでは、ほかのページより文字数は多いかもしれませんが、その分丁寧にビザ申請で体験したすべてをお伝えします。それでも人によっては必要な書類やプロセスが違ってくることもあるかもしれません。ですので、できる限り多くのページを参照したうえで、万全の備えをしてくださいね!
というのは、これは先に英国留学している先輩から聞いた噂ですが、書類に不備などがあり、ビザ申請が却下されると、二度目以降はとても審査が厳しくなるとのことです。弁護士をつけなければならなくなったりするそうです……。
②資金証明書類
さて、この項目は必読です。Tier 4ビザ申請をするあらゆる方に読んでいただきたい!
Tier 4ビザ申請の難関、資金証明にかんしてです。
資金証明とは、Tier 4の場合、9ヶ月以下のコースならコースの授業料とコースに要する月数分の生活費、9ヶ月以上なら1年目の学費と9ヶ月分の生活費が28日間以上、通帳に預金されていることを証明する書類になります。詳しくはこちらのページをご覧ください。私の場合何を用意したかは後でちゃんと書きます(後で書きますが、提出はしていません)。
この資金証明書類は、上のリンクのようなビザ申請代行会社のページでは必要とされていることが多い一方、私のブログのように、体験談がつづられているブログではほとんどの場合(というか私が参照したものは全部!)実際には不要と書かれています。
どういうことかと言いますと、このページにリストアップされている高等教育機関に留学する場合、CAS番号があれば、日本はLow risk nationalitiesに指定されているので、資金証明書類は不要とされているんです。これは英国政府自身が認めていることで、またのちに記事にしますが、申請センターに行く前にウェブ申請をする段階で(これも意味不明かと思いますが、英国ビザ申請はウェブ申請+申請センターでの申請の二段構えになっています)、当日申請センターにもっていくべき書類のチェックリストが発行されます(これも謎かと思いますが、このチェックリスト自体が持っていくべき書類だということも頭の片隅に置いておいてください。これについてはまた注意喚起します)。そして、そのチェックリストには次のような記述があります。
You do not need to provide evidence of your qualigications or finances as you are a national of a country mentioned in Appendix H of the Immigration Rules.(あなたはImmigration RulesのAppendix Hに言及されている国の国民なので、あなたの資格の証明(入学許可証とか?)あるいは資金証明を提出する必要はありません。)
しかし!、この直後にはこう続いています。
Occasionally, UK Visas and Immigration (UKVI) may request this evidence while your application is being considered. (時々、UKVI(これはビザ申請を受理し審査する政府機関です)はあなたのビザ申請が審査されている間に、この証明(資金証明)を要求することがあります。)
そして、怖いのですが、その後には次のように続きます。
If the evidence is requested, your visa application may be refused if you do not provide it.(もし証明が要求されたにもかかわらず提出しなかった場合は、ビザ申請が却下されることがあります。)
つまり、日本から上のリンク先にあるPDFに載っている高等教育機関に留学する場合、資金証明は基本的に不要なのですが、時々抜き打ちがあるのです!!そして、抜き打ちで求められたとして、資金証明は、上述したように28日ルールというのがあるので、用意してないと要求されてもすぐに提出できないのです。そして、もしかしたらそれでビザ申請が却下される可能性があるのです!
そんなことって本当にあるの?と思いますよね。私もそう思いました。色々なブログを見て、実際に不要だったと書かれていたので、まあ用意しなくてもいいか、と思っていたのです。しかし、先に留学している先輩に訊くと、やはり抜き打ちが稀にあるとのことで、その先輩も念のため資金証明書類を用意したとのことでした。
そして、ここから要注目です!なんと、現在所属している大学院から英国に留学する別の方で、私の翌日にビザ申請を行った方が、抜き打ちの対象になってしまったのです!!!
その方はちゃんと書類を用意してあったので大丈夫だったようです。(それでも、私より10日ほどビザ取得が遅れていました。)
もちろん、資金証明書類を要求されるのは稀なことかと思います。でも、もし抜き打ちに引っかかったら、用意してければたいへんなことになります。ですので、私としては、資金証明書類は用意しておくことをオススメします。
さて、上で言いましたように、7月になってから先輩に資金証明書類を用意しておくことをすすめられたので、本当なら7月に申請する予定だったのですが、通帳に28日お金を預けてから、すなわち8月に入ってからの申請になってしまったのです!
資金証明に必要な額はかなりの額になります。私の場合だと1年分の学費約250万円に、9ヶ月分の生活費150万円、計400万円になります。読者の方には経済的に豊かな方で、それなりに貯金のある方もいるかと思いますが、わが家はそんなに豊かではありませんでした。そこで、恥ずかしながら、親の知人から借金をしました。今回は見せ金ということで、また家族のように親しくしている間柄でしたので貸していただけましたが、普通はそうはいかないかと思います。
上で言及した先輩は、このために、第一種奨学金を何年か借りて積み立てておいたそうです。
このように、ビザ申請にあたってはかなり事前から準備の必要なものがあります(と言っても、資金証明書類だけかな?)。早めに準備をはじめてください。以上、ぜひ知っておいていただきたいことでした。
さて、資金証明書類としては、自分名義か親名義の通帳と、それを英文に翻訳した書類もセットで提出しなければなりません(あくまで抜き打ちで要求された場合です、念のため)。どういう書類が必要になるかの詳細は、あらためてこちらのページなどを参照してください(ただ、このページの情報も、実際とはけっこう違うことが書かれています。たとえば、私の場合は顔写真とオンラインで作成した申請書は不要でした)。
上のリンク先にもありますが、英文への翻訳ということで、銀行が英文の残高証明書を発行してくれることがありますが、残高証明書では資金証明書類として認められないので気をつけてください。というのは、資金証明は、口座に28日間入っていたことが分かる書類でなければならないので、残高証明書は資金証明にはならないんですね。
そこで、通帳で28日間の取引きの動きがわかるページと、表紙をめぐった最初のページ(印など印刷されているページ)を英文に翻訳してもらわなければなりません。私は株式会社翻訳センター様のお世話になりました。この会社は、通帳のどのページの翻訳をお願いすればいいのか質問したら丁寧に教えてくれたり、本当は1ページいくらなんですが、1行しか記載のないページはサービスでタダにしてくれたりと、とても親切で素晴らしい会社でした。ほかのある会社に相談したところ、内容についてはお答えできませんと言われ、絶望したところ、たいへん安心できました。なお、翻訳センター様は翻訳証明書も発行してくれます。
通帳のページをスキャンしたjpegファイルを送って見積もりをし、実際に発注してから4日ほどで紙媒体の書類が郵送で到着しました。この日数も準備にかかる日数として考慮しておくべきです。代金は税込みで5400円でした。
長くなりましたが、以上で準備は完了です。ここまで来たらあとはウェブ申請に進みます!それについてはまた次回!!ぜひご期待ください!!!
英国ビザ取得に至るまでの道①ビザ取得の報告
本日、2019年8月15日、英国ビザが取得できました!
私が取得したのはTier 4 (General) Studentと呼ばれるもので、いわゆる学生ビザです。
取得に至るまでにはかな~り長く、かつ神経をすり減らす過程を経ました。今後ビザ申請をする人のために少しでもお役に立てるよう、記憶が新鮮なうちに今回のビザ申請を振り返っておきたいと思います。
本記事から数回に分け、できる限り詳細に、最初から最後までのプロセスを記します。今回はまずはビザが取得できたという報告だけで終わります。
次回以降お楽しみに!
学参レビュー③西きょうじ『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー)
今回とりあげるのは、西きょうじ『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー、以下『ポレポレ』)です。
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まずはレビューから!
オススメ度:☆☆☆☆
難易度:中~上級者向け
この参考書はいわゆる「英文解釈」系の参考書になります。書名には「英文読解」とありますが、まあ同じことです。このブログで英文解釈系の参考書を扱うのは初めてなので、まずは簡単に、英文解釈とは何かについて説明しておきましょう。
・「英文解釈」とは?
日本(の受験業界)ではしばしば比較的短い英文を文の要素(SVOC)に腑分けしたりして構造を分析する作業を「英文解釈」などと呼ぶことがあります。長文に取り組む前の準備段階として、一文一文を正確に解釈できるようになろうという趣旨でやるものです。
そのうえでは、英文法で勉強した知識を実際に英文に読む際にどう活用すればよいかを学びます。もちろん、英文法の知識で不要なものなどないのですが(というか、英文法はすべての技能のベースなので、英文法が独立した分野としてあるような書き方は避けたいのですが、たとえば予備校では「英文法」という名前の授業が実際にあり、英文法の四択問題などを解くことに特化した授業がなされることがあります)、特に読解で重要になってくる文法事項があるんですね。
たとえば、英文解釈では時制が焦点になることはあまりないでしょう。焦点になるのは、文型、準動詞、関係詞、接続詞……etc. あまり英文法の勉強ではフォーカスされない知識が、英文解釈では前面に出てくることがあります。たとえば、文法の授業ではおそらくさらっと扱われる事項として、前置詞のついた名詞は基本的に文の要素にならないというものがあります。これは英文を読むうえではあらためてよく意識する必要がある知識です。その他、英文解釈では、「特殊構文」と呼ばれる倒置や省略なども扱われることが多いです。以上が、英文解釈と呼ばれるものの内容ですね。
いつからそう呼ばれるようになったかは知りませんが、たとえば私が以前教えていた予備校は河合塾の提携校で、河合塾のカリキュラムとテキストを用いていたのですが、1学期(河合塾では基礎シリーズと呼びます)は「英文解釈」という授業が必修で、2学期(完成シリーズ)からは「英文読解」という名前に変わって同じような授業をしていました。(もっとも、1学期から長文の授業も並行してやっていましたが。実際には1年で生徒を受験を戦えるようにしなければならないので、1学期のあいだずっと解釈だけやってるわけにはいかないんですね。)
「英文解釈」系の参考書は、「長文読解」系の参考書とは違い、まずは一文一文を正確に読めるようになることを目的としていますので、扱われる英文は短いものが多いです。和訳が出る大学を受ける受験生はもちろん、そうでない受験生も、英文法で覚えた知識を、実際に英文を読むなかでどう活用すればよいのかを学ぶには、必要なプロセスだと思います。
有名どころの「英文解釈」系参考書としては、篠田重晃他『英文読解の透視図』(研究社)、伊藤和夫『ビジュアル英文読解』(駿台文庫)、同『英文解釈教室』(研究社)などがありますね。(以下に、リンクを貼っておきます。興味のある方はのぞいてみてください!)
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・『ポレポレ』の衝撃
『ポレポレ』は私が生まれた初めてやった英文解釈の参考書です!
この参考書は、代ゼミマニアの友だちが教えてくれて知りました。やったのは高3の最後のほうではないかと思います。私は塾や予備校に通っておりませんでしたので、それまで英文解釈的なものを一切知りませんでした。学校では、長文の解説でひとつの文を取り出して丁寧に解釈することはあったかもしれませんが、英文解釈だけをやるような授業はやっていなかったと思います。なにより田舎でしたし、当時の私にはまともなネット環境がなかったので、情報も入ってこなかったんですね。
はじめてやったときは、衝撃的でした!!それは、英文解釈という勉強をそれまでしたことがなかったのもありますが、今思うと、この参考書が、英文解釈の参考書のなかでは群を抜いてよくできていたからだったのだと思います。この参考書で英文解釈を始められた私はラッキーでした。Kくん、ありがとう!
その書名、なぞの表紙(カバーをとるとまたびっくりします)、ときどき挟まれる著者の動物イラスト、そして(今は変わっているようですが)著者のとがった自己紹介にプロフィール写真のクセのすごさといったら!!これらに面食らう人は多いのではないでしょうか。まさに出版元の予備校のカラーでもありますが、イロモノ感満載ですが、内容はいたって硬派です。
この参考書の一番の特徴は、書名にもあるとおり、英文読解をする際の「プロセス」、つまり、英文を読むときに頭のなかでどんな思考回路を経るのかが、文字化されているところです!それまで私がやってきた長文の参考書はもちろん、そのあとやった英文解釈の参考書も、基本的には、「この英文はこうなっている」という結論は解説してくれるんですが、この参考書は、「その英文がなぜそうなっていると解釈できるのか」ということを、英文を左から右に読み進めながら、ときに生徒の目線に立ってわざと誤読してみせたりしながら、示してくれているのです!
たとえば、一番目の問題からして衝撃でした。Frank talksから始めるその英文を、まずはFrank talksまで見た時点ではFrankが固有名詞で主語であり、talksが動詞talkの現在形であると解釈するとしたあとで、そのあとにrevealという動詞が出てくるのを待って、talksが名詞talkの複数形でrevealの主語になり、Frankは「率直な」という意味の形容詞でtalksにかかっていると解釈をあらためるというプロセスを、紙面で実演してくれるうのです!
今になってみると、実はそういう参考書の元祖はこの参考書ではなく、上述の『英文解釈教室』なのですが、『ポレポレ』はプロセスをもっと前面に出していると思います。ちなみに言うと、英文を読む際に、頭のなかでは何が起こっているかをさらに徹底的に文字化しているもので、『ポレポレ』よりもハイレベルなものに、最近出た北村一真『英文解体新書』(研究社)があります。この本のレビューもいずれ書いてみたいと思っています。
英文解体新書 構造と論理を読み解く英文解釈 [ 北村一真 ] 価格:2,376円 |
さて、『ポレポレ』では、プロセスを紙面でたどりながら英語を読むときの頭の動きを追体験し、さらに、そのなかで前置詞のついた名詞は主語にならないとかといった、英文を読むのに必須のルールを学んでいくのです。その配列も見事で、また問題数も極限まで絞られていて、そのために一つの問題にいくつものポイントが含まれています。密度がすごいんです。一粒で何度ももおいしい良問が揃っています。最短ルートで英文解釈のかなりハイレベルなところまで到達できるはずです。そして、非常に薄い参考書なので、参考書を最後までやり通すのが苦手な人でもきっとやり遂げられます。
ただ、『ポレポレ』には、SVの把握といった割と基本的なところから始める一方で、文型や準動詞などについての基本的な解説はほとんどなく、倒置や省略、名詞構文などの特殊構文が中心になっています。つまり、網羅性が低いんですね。同じことは、『英文読解の透視図』や『英文解釈教室』などにも言えます。それだと、たとえば分詞構文などの、英文を読むうえでは苦手な人の多く、にもかかわらず英文を読んでたら必ず出あうような事項が身につかないと思います。なので、これらの参考書を読む前には、まず『ポレポレ』の著者の『英文読解入門基本はここだ!』(代々木ライブラリー)を強く勧めます。河合塾でも、1学期(基礎シリーズ)のうちは、まずは文型とか準動詞をみっちりやるんです。特殊構文は2学期(完成シリーズ)からなんですよ。
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今回の記事ははからずも、英文解釈入門の入門になってしまいました。英文解釈とは何か、何をやればいいのかといったことが気になっているみなさんの役に立つことを願います!
学参レビュー②江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)
前回の記事で紹介した杉山忠一『英文法詳解』(学研)でも言及した、江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)を紹介したいと思います!
この本は私が外語大時代に、英語学がご専門の先生から強くオススメされた本で、授業でもたしか読んだように思います。その先生は特にこの参考書の「名詞」の単元(無生物主語構文や名詞構文の項目)の記述が素晴らしいとおっしゃっていたように思います。(ちなみに私はこの本を浪人生のときから持っていました。)
ざっくり言いますと、この本は英文法のレファランス本で、通読用というよりは、わからないことがあったときに索引で調べるのに適した本です。もちろん、ある単元だけとか、できるなら全体を通読してみても勉強になるはずです(私はしたことがありません……(笑))。文法レファランス本全般については前回の記事をご覧ください!
まず全体的な評価から!
レベル:中級~上級
おススメ度:☆☆☆☆☆(絶対買ってほしい!)
さて、この本の特徴は、『英文法詳解』(以下、『詳解』)と比較してみるとわかりやすいと思います。『詳解』が文章での解説が丁寧であるのに対し、この本は基本的に解説は少なめです。その分、例文がめちゃくちゃたくさん載っています。そして、そのどれもが粒よりの例文で、また訳が素晴らしい!実際に具体例を豊富に示して、例で語るスタイルの参考書と言えるでしょう。ですので、本当に初学者の方にはとっつきづいらいと判断し、レベルは中級~上級としました。
私はこの本と『詳解』(それともう一つ、安藤貞雄『現代英文法講義』(大修館))で調べものをすることが多く、通読はしてませんが、予備校講師時代には、文法である単元を教える前にはその単元の記述を読んだりはしていました。結果的にはほとんどのページには目を通していると思います。
そして確信しているのですが、この本でもっとも記述が充実しているのは、上で外語大の先生も激賞されていましたが、「第1章 名詞」です!そのなかでも特に無生物主語構文と名詞構文の項目は素晴らしく、豊富な例文はぜひすべて暗唱したいですね。訳し方も含めてたいへん勉強になります。そこにもあるのですが、どうやらこの本で扱われるまでは特に名詞構文はなおざりにされていたらしく、その点でこの本が果たした役割は大きいように思います。実際、私は河合塾提携校で教えていたのですが、河合のテキストの名詞構文のくだりにはこの本と同じ例文がいくつか見られました(パクり?いや、それくらいこの本が画期的だったのでしょう!)。
ですので、そもそもこの本は買っておけばいつかきっと役に立ちますから買っていただくとして、できればまず「第1章 名詞」だけでも舐めるように読んでみてはいかがでしょうか?
それ以外にも、この本は小さいフォントで記された「解説」にやや突っ込んだ専門的な説明があり、英語を本格的に勉強したいひとにもきっと満足していただけると思っています。
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英語学参レビュー①杉村忠一『英文法詳解』 (学研)
留学準備やらスクーリングやらで忙しく、しばらく間が空いてしまいました。またこのブログも更新していこうと思います。
さて、今回から英語の学参レビューを始めようと思います。世間で有名な参考書は実際のところどうなのか、あるいは知られていないけどすぐれている参考書を紹介していきます。
それぞれの参考書については、まずレベルや用途、そして長所と短所、最後に使い方などを説明していこうと考えています。
紹介していく順番はランダムでいこうと思っています。あまり考えすぎると更新が滞ってしまいますので。
それでは始めましょう!
初回に取り上げるのは、杉村忠一『英文法詳解』 (学研) です。
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本記事をアップしている現在、まだAmazon様とアフィリエイト契約を結べていないので、楽天様のリンクを貼っておきますが、おわかりのように、最近品切れになり、中古での価格が高騰している本書!なんと、まだ新刊書店ではふつうに陳列されていることがあります!! (私は先日近所のイオンモールに入っている中規模書店で見かけました。) まだお持ちでない方は、今はまだ使いみちがわからなくても、いつか役に立つと思って、ぜひ買っておくといいでしょう!
・点数
全体評価:☆☆☆☆☆ (五つ星:必ず手元に置いておいてほしい)
難易度:高校初級~上級
・レベルと用途
この参考書はいわゆる文法レファレンス本で、通読してもよいのかもしれませんが、普通は、英語を勉強していてわからないことが出てきたときに巻末の索引で検索してそこだけ参照するものだと思います。あるいは苦手な単元だけ熟読するとか。
この種の文法レファレンス本には、有名どころとして他に、江川泰一郎『英文法解説』 (金子書房) があります。また、より専門的なものに安藤貞雄『現代英文法講義』 (講談社) があります。 (それぞれについてはまたレビューしていきたいと思っています。)
この本は、上記の『英文法解説』と双璧をなす本で、どちらを手元に置いておくかは好みによるでしょう。『英文法解説』が例文を多く載せており (どの英文もよく練られた素晴らしいもので、和訳も含めてこの本の一番の魅力になっています) 、説明より例文に語らせるスタイルでやや塩対応 (上級者向け) なのに対し、『英文法詳解』のほうが説明が丁寧で和訳のコツなども載っており、初~中級者向けといえます。
もちろん、『英文法詳解』のほうにも、ほかの参考書には載っていないような驚くほど細かな事項が載っていることがあり。上級者まで使用にたえるでしょう。ですので、大学受験生だけでなく、大学生や、英語を教える仕事についている人も、頻繁に参照することになるはずです。
・長所 (と短所)
上の説明でほとんど長所は言ってしまいましたが、あえて繰り返すなら、説明がとても丁寧で、英語を日本語に訳す際のコツのようなことまで触れられています。ほかの文法レファレンス本には見られない特徴と言えます。
たとえば、この本の再帰代名詞の解説を見てください。〈他動詞+再帰代名詞〉はしばしば自動詞のように訳すことがあるのですが (e.g. enjoy oneself「楽しむ」) 、さらに、受動態のように訳すこともあります (e.g. explain oneself「説明される」) 。こうしたことを項目化して説明してくれてあると、指導者は生徒に教えるときにとても重宝します。
このように、『英文法詳解』でしか説明されていない項目が少なくないというのが、この本をぜひ一冊は買って手元に置いておきたい理由です。
私個人として、学習者としてはもちろん、英語講師になってからこの本の説明に何度救われたことが、数えたらきりがありません (私のものは付箋だらけになっています!) 。
短所は特に思いつきませんが、あえて言うなら、単元の配列にやや癖があることでしょうか。句・節などの説明が後ろのほうにあったりします。でもこれは著者独自の体系化で、それ自体ストロングポイントともいえます。
・使い方
普通には、文法でわからないことを調べる、レファレンス用に持っておくものと思います。苦手な単元だけバーッと読んでみるのもよいでしょう。全体を通読する人はあまりいないのではないでしょうか。少なくとも私はしたことがありませんし、多くの人は途中で挫折すると思います。英文法の全体像を頭にいれたいなら、もっと薄い参考書でざっとみるのが吉です。そうした用途にあった参考書はまたこのブログで紹介します。
「with+抽象名詞」の存在意義
みなさんこんにちは!
今日は試験的に英文法の解説記事を書いてみたいと思います。今回とりあげるのは、「with+抽象名詞」です。これは副詞とイコールになると習うことがあります。たとえば、「この文を日本語に訳すのに苦労した」と言いたいとき、形容詞のdifficultを使って、
It was difficult for me to translate this sentence into Japanese.
≒This sentence was difficult for me to translate into Japanese.
(直訳は「この文を日本語に訳すのは難しかった」)
と言ったり、あるいは名詞のdifficultyを使って、
I had difficulty (in) translating this sentence into Japanese.
(直訳は「この文を日本語に訳すのに困難を伴った」)
と言うことができます。それでは、difficultの副詞形はないのか。ないんです!difficultに-lyをくっつけた形は存在しません。しかし、名詞のdifficultyの前に前置詞のwithを置いてwith difficultyとすると、「苦労して」のような、副詞に相当するような意味を表すことができるのです。便利だと思いませんか?
I translated this sentence into Japanese with difficulty.
これを、「難しさをもって」とか「困難とともに」などと和訳しないように気をつけましょう。
このように、一般に「with+抽象名詞」は副詞の働きをします。以上の説明からもお分かりのように、こうした形がある理由の一つは、形容詞のなかにはdefficultのように、派生副詞の存在しないものがあるということです。そこで、with difficultyという形で副詞の代用をするのです。もちろん、例外もあり、たとえば、difficultの反意語のeasyには派生副詞があります。easilyですね。ですが、これをwith easeと言うこともできます。たとえば、
He solved the problem with ease (=easily).
(「彼はその問題を簡単に解いた」)
そこで、もう一つ、この「with+抽象名詞」という形が存在する理由として、この形を使えば、抽象名詞に色々な形容詞をつけることができ、たとえばeaseがどんな「容易さ」なのかを多彩に表現できるのです。したがって上の例文は、以下のようにアレンジすることが可能です。
He solved the problem with great ease.
greatの位置には他にも、considerableとか、easeと結びつきのよいいくつかの形容詞を入れることができます。
以上、まとめますと、「with+抽象名詞」は副詞の働きをする。この形の存在意義は、①派生副詞をもたない形容詞を副詞的に用いたいときに重宝し、また、②抽象名詞の前に多様な形容詞をつけて様態に具体性をもたせることができると言えます。
ほとんど同じことが、「of+抽象名詞」という形にも言えます。これは形容詞の働きをしますが、存在意義は同じ。これについてはまた稿を改めましょう。
ちなみに、今回の記事を書くにあたって参考にしたのは、山崎貞『新々英文解釈研究』 (研究社、2008)、197頁です。
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英文法の問題集をやるときに注意したいこと!
英文法は、講義で説明を聞いたり参考書で解説を呼んだりしたあと、必ずアウトプットをしないと定着しません。 (この話については根拠がありますので、こちらの記事のはじめのほうをご覧ください。)
私がオススメするアウトプットは、四軒家忍先生の『英文法使いこなしルールブック』を利用したものです。
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しかしここでは、高校生や浪人生など、『ネクステ』や『即戦ゼミ』のような学校で配られた文法の問題集を利用して英語を勉強している読者を想定し、どうやったらより効果的なアウトプットができるか、その心構えのようなものを書いてみようと思います。
予備校講師時代の生徒への聞き取りから、学校では一般にこうした問題集が配布されていることがわかっています。私じしんが高校生の時分には三年生の上がるときに『即戦ゼミ』が配られました。また、予備校の英文法のテキストもこうした問題集と同じく空所補充や整序問題が中心の構成になっていました。上記の問題集じたいの教材としての良しあしや、四択問題のような設問形式の適切さの批評はここではしないでおきましょう。というのも、高校生も浪人生も、自分では問題集を選べないのですから。より良い教材で勉強することは大切。でも、とりあえず、手持ちの材料を使って最大限学ぶ工夫も大切です。
以上、前置きがやや大げさになってしまいましたが、なんてことはありません。心構えとは、こうした問題集でアウトプットするときも、一つひとつの問題をライティングやスピーキングなどの具体的な使用場面に引きつけて、臨場感をもって取り組むということです。言い換えれば、個々の問題を、書いたり話したりするときの文法的な選択を追体験するつもりで解く、ということです。
たとえば、典型的な文法の問題集の四択問題として、次のようなものがあります。 (この問題は私が適当に作りました。)
The email was sent to your official address ( ) 27th March.
①at ②in ③on ④from
正解は③です。これは、時を表す前置詞の問題で、「~に」の意味で日や曜日の前にはonを置くというルールがあるのですね。atとinにも「~に」という意味で時を表す用法がありますが、atは時の一点を表します (ex. at noon「正午に、12時きっかりに」) し、inはもう少し幅のある時間を表します (ex. in the morning。ちなみに、日や曜日が絡むと幅のある時間でもonを選びます。cf. on Sunday morning) 。
さて、こうした問題を解くときも、たんに習った文法の知識の確認として解くのではダメです!実際に自分が書いたり話したりするときに、上の知識を使い慣れてない人は、迷うことがあると思います。実際に生徒の英作文を添削していて、この前置詞の選択を間違える生徒は上位層でも少なくありません。そこで、この種の四択問題を解くときにも、自分がこういう英文を実際に書くことになったと想定して、その場面でどの選択肢を選ぶだろう、という心構えで解いてほしいのです!ちょっとした心構えの変化が、大きな違いを生むはずです。
ちなみに、上の問題は私が今朝書いたメールの本文の一部を変え、onの部分を空欄にしたものです。それを踏まえてもう一度問題を見てもらうと、たぶん、上の問題ももっと臨場感をもって迫ってくるのではないでしょうか。この問題は、問題の上で私の (一瞬ではありますが) どの前置詞にしようかという迷いと選択を再現しているのであり、私の実際の使用を追体験できるのです。
文法の問題集の問題も、同じように見てみてほしいのです!見方を変えるだけです。そうすることで、実際に文法の知識を自分で使うことにつながるようなアウトプットが、問題集を使ってもできるはずです。
同じことは、整序問題にも言えるでしょう。ただ正直言いますと、私は文法のすべての単元のアウトプットとして整序問題が有効であるとは思っていません。もちろん、英語は助詞がないぶん、日本語よりは語順が大切な言語であり、その点は強調しても強調しすぎるということはないでしょう。 特に初学者は、まずは英語の語順を叩き込むべきです。 (ちなみに、英語の語順を身につけるには、田中健一先生の『英文法入門10題ドリル』 (駿台文庫) がオススメです。)
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ですが、たとえば、時制とか助動詞の単元で習う知識を実際に使う場面で、語順で悩むことってあるかな、とは思います。整序問題は、たとえば間接疑問文など特に語順が問題になるような単元の練習には効果的で、私自身テンポの速い会話では、しばしば間接疑問文の語順を間違えてしまうことがありましたが、そうした実際の会話の場面を想定しながら並び替えでアウトプットし、克服しました。
また、正誤問題は、自分が書いた英作文を添削するつもりで解いてみるといいでしょう。私は正誤問題は、受験者が多く英作文を出題できない大学が代わりに出す設問形式と捉えています。正誤問題で頻出のSとVの一致とか冠詞の有無といった項目は、英作文の添削で最もよく直されるポイントでもあります。また証拠として、早稲田の人科では、かつて正誤問題でスペリングの誤りや、和製英語の誤りも出ていたのです!これは他でもなく英作文の減点項目ですね。
以上、繰り返しになりますが、とにかく英文法の問題集をやるときには、必ず一つひとつの問題を実際の使用場面をイメージして解く!、このことを意識することで、単調な〇つけ作業を、有効なアウトプットの機会に転じることができるはずです!!